女川の海を支える実習生たち~技能実習?それとも単純労働?~

女川の海を支える実習生たち~技能実習?それとも単純労働?~

今日で鮮冷さんも3日目。工場労働から食品管理データベース作成の仕事へと移り、眼精疲労に苦しんでいるところです・・・就職活動ではご縁のなかったコンサルティングの仕事をやっているようで、ある意味新鮮です。作業量は膨大ですが・・・

(朝の海辺。早起きは三文の徳ですね!)

さて、今日は女川における「活動人口」を構成している技能実習生にスポットライトを当てようと思います。水産加工エリアでは、各企業で(主にベトナムから来ている)技能実習生が多数働いています。だいたい3~5年の滞在期間で日本の水産加工の現場で働きながらその技能を本国に持ち帰るというのが建前となっております。

 

しかし、実際はどうでしょう?まず企業側としては比較的安い賃金で安定した労働力を得ることができます。食品安全の観点から一定程度のリスクは伴いますが、Standard Operationを叩き込んでしまえば、思いのほか言葉が十分に通じなくても工場の生産ラインを下支えすることは可能です。実際に、水産加工工場において、商品パッキングや梱包などに多くのベトナム人実習生が従事している一方で、食品加工などの技術的・衛生的に肝要な場は地元の労働者が支えるという形で役割分担が成り立っています(厳格な衛生基準を満たそうと思うと言葉が完全に通じない実習生たちにそれを任せるにはリスクが多きすぎるのでマネジメントの形としてはベストです)。お話をうかがってみても、雇用者側は技能実習というよりむしろ重要な基盤労働力として彼らの存在を捉えているように感じられました。

こちらは実際に水産加工工場で働かずとも容易に想像できることです。問題は実習生のメンタリティーにあります。昨日までの2日間、ベルトコンベアを回しつつ何人かに話を聞いてみると、帰国しても特にやりたいことがあるわけでもなく、ここで学んだ水産加工の技術(そもそも学べるのかという疑問は置いておくにしても)を使って本国で成功を収めようとしている人は一握りであることがわかります。それに加えて給与は本国の約3倍以上ときているので完全に「出稼ぎ」目的となってしまっています。働く過程で日本語を多少使えるようになれば本国でのビジネスチャンスも拡大するというのが本音だそうです。もちろん仕事はきちんとやるのですが、小学生のように茶々を入れ合ったりする場面も何回かあったりして、真剣に技能を学びとろうとしているのか?と疑問符がついてしまいます。

 

果たしてこれは「技能実習」といえるのでしょうか??

 

「移民法」と批判された昨今の入管法改正もこのような建前と実態の乖離が背景にあります。問題は「不足する人材の確保を図るべき産業上(筆者注:例えば水産加工業)の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人(注:つまり今の技能実習生)向けの在留資格」に該当する「特定技能一号」に彼らが相応しいといえるのかという問題です。実体と立法趣旨の乖離を小さくしていかなければ問題は残存し続けることでしょう。今回働かせて頂いている鮮冷さんでは、彼らに対する比較的共存体制や福利厚生がきちんと整っていますが、中にはそうでない労働環境に置かれている実習生もたくさんいることが新聞報道などからも分かってきています。

 

何はともあれ、水産加工業が人材不足で衰退していったら運命共同体である漁業も廃れていってしまいます。その意味では、彼ら実習生は女川の「海」を守っているのです。

 

女川が推進している「活動人口」(2回目のブログでも説明した「女川式構造改革」の4つの側面のうちの1つ。女川に「かかわる」人口を増やすことで、まちづくりや地域経済に貢献する人材を指数関数的に増やし、新しいアイディアをどんどん生んでいくための「人口」概念のパラダイムシフト)に、彼らが含まれているということを、今女川に居る方は忘れずに過ごして頂ければと思っています。シーパルピア商店街のみを「女川」だと思っていてはまちづくりの全体像を見失ってしまうというのが私の考えです。

投稿者プロフィール

Shion Ohno
Shion Ohno
はじめまして!大野志温(おおのしおん)です。
東京都出身24歳。東京大学公共政策大学院修了後、都内で働いております。
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