この季節

この季節

季節の移り変わりは、いつも突然やってくる。

特に10月。街を歩いていると、ふと甘い香りが鼻をかすめることがある。

金木犀。

不思議なもので、姿が見えなくても香りだけで振り向いてしまう。どこから漂ってきたのだろうと、思わずあたりを見渡してしまう。

女川でも、そんな金木犀に出会うことができた。

金木犀といえば、実家の庭にも一本あった。

毎年、秋になるとたくさんの花を咲かせる。地面にはオレンジ色の小さな花がいくつも落ちていて、庭を鮮やかに彩っていた。

もっとも、当時の自分にとっては少し厄介な存在でもあった。

花が落ちるたびに掃除をしなければならない。あれだけたくさん咲けば、当然その後始末も大変になる。きれいだと思う気持ちよりも、掃除の面倒くささが勝っていた気がする。

それなのに、今になって金木犀の香りを嗅ぐと、そんな何気ない実家での暮らしを思い出す。

離れて暮らしているからこそ、当たり前だった景色が少し違って見えるのかもしれない。

女川に来て、初めて迎える秋。

好きな季節の訪れを、ここでも感じることができた。

場所が変わっても、季節は巡ってくる。

そして、その香りは、忘れていた記憶を連れてきてくれる。

投稿者プロフィール

松本匠世
松本匠世
兵庫県西宮市出身。23歳、現在大学院生。
大学では建築設計を専攻しており、建築分野の幅広さに気づき様々な分野を勉強中です。
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