後半戦

後半戦

シェアハウスの夜は、奇妙な熱気に包まれていた。

机の上には幾枚かのトランプが散らばっている。人々はその周囲を取り囲み、互いの顔色を窺っていた。大富豪である。

しかし、今宵の勝負には、いつもとは違う趣向があった。

敗者は眉毛、あるいは前髪を失うのである。

人間というものは不思議なもので、たかが遊戯に過ぎぬトランプの勝敗に、これほどまでの執着を見せる。ましてや、その代償が己の顔面に及ぶとなれば、なおさらであろう。

前半戦、私は幸運に恵まれていた。

手札は都合よく揃い、勝負の流れもまた私に味方していた。周囲の者が次々と苦境に立たされる中、私は涼しい顔でカードを場に出していたのである。

この調子ならば、今宵の私は無傷で帰れるに違いない。

そう考えていた。

しかし、運命というものは、往々にして人間の油断を好む。

後半戦が始まると、先ほどまでの幸運は、まるで夢であったかのように消え失せた。

手札には使い道のないカードばかりが残る。革命が起こり、勝負の形勢は見る間に変わっていった。

私はカードを握りしめた。

出せない。

また、出せない。

周囲の者たちの表情には、奇妙な安堵と期待が浮かんでいる。彼らは私の敗北を待っているのだ。

なんということだろう。

つい先ほどまで、私は彼らの敗北を眺めていたはずである。

やがて最後の一枚が場に置かれた。

敗北であった。

私はしばらく黙っていた。

眉毛を残すべきか。それとも前髪を守るべきか。

人間は、失うものが二つある時、初めてそのどちらも大切であったことに気づくのかもしれない。

傍らには、いつの間にかハサミが置かれていた。

投稿者プロフィール

松本匠世
松本匠世
兵庫県西宮市出身。23歳、現在大学院生。
大学では建築設計を専攻しており、建築分野の幅広さに気づき様々な分野を勉強中です。
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