私がはじめて東北で迎える3.11のはなし【彩乃のお試し移住録③】

私がはじめて東北で迎える3.11のはなし【彩乃のお試し移住録③】

もう4年半前になる2019年の8月11日、私は偶然にも東京の「きっかけ食堂」に足を運んだ。そしてその翌月には人生ではじめて東北に足を運び、以来足繁く通うようになったと思えば、去年の9月についに宮城へ移住してしまった(それも当初は移住するつもりで来たわけじゃなかったのに。笑)。

 

▶︎「きっかけ食堂」とは?
「きっかけ食堂」は、京都・東京・仙台などを中心に毎月11日に開店する東北酒場。東北の食材を使った料理やお酒を提供し、その場を通して東北や震災について考える「きっかけ」をつくるために、2014年5月に京都の立命館大学の学生三人がはじめました。生産者さんの元へ足を運び仕入れた食材を、美味しく食べてもらうことで「東北」という土地を想うきっかけに。お客様同士を半ば強制的に繋げることで、世代を超えた交流をするきっかけに。

Facebook:https://www.facebook.com/kikkake.syokudo/
Instagram:https://www.instagram.com/kikkake_syokudo/

 

東京で東日本大震災を体験した私にとって、3.11は印象深い出来事でこそあったものの、無力な中学生にできたことといえば数百円の募金くらいだったと思う。

東北に通うようになって、「きっかけ食堂」に関わるようになって、震災の話題は避けては通れない。
私の人生において、震災や防災への意識が大きく変化したのは、教育関係のボランティア先でたまたま知り合った「としさん」との出会いがきっかけだった。

今年の3月10日、団体さんに向けて語り部をするとしさん。

としさんは東日本大震災当時は女川の中学校で国語の先生をされていたが、石巻市立大川小学校の6年生だった次女を津波で亡くしたことを機に、大川小学校で語り部の活動をされている。

 

▼「津波被害から13年、石巻市立大川小学校から未来を拓く〜語り部の活動を支えるものとは」(LINE NEWS)

https://news.line.me/detail/linenews/zwuta4i08pdg

(としさんの話がわかりやすく、けれども丁寧にまとまっているので、ぜひ読んでもらいたい)

 

私はとしさんの語り部をはじめて聴いた時、震災や防災について深く考えさせられると共に、「としさんのこの話を一人でも多くの人に聴いてほしい」「私も何かしたい」という気持ちを強く感じた。それ以来、知人たちを大川小に連れて行ってはとしさんの語り部を聴いてもらったり、大川小でとしさんの語り部に同行する時には、その場に居合わせた1人でも多くの人たちに「よかったら一緒に聴いて行ってください」と声をかけるようになった。

けれども、私ができたことといえば、所詮その程度のことである。

「何かしたい」という気持ちはあっても、「大したことのない体験しかしていない私」が、「あの時何もできなかった私」が、この東北の地で「何かする」ことへの葛藤。

「偽善」「申し訳ない」というよりは、どちらかというと「おこがましい」「失礼」みたいな言葉が私にとってはしっくりくる。

今年は私がはじめて東北の地で過ごす3.11だった。

「東北で3.11に向けてどう過ごしたらいいのかわからない」という戸惑いを抱えつつ、「今年は3/9,10が週末だから何かできることがあるかもしれない」と思って予定を空けていたが、想像していたよりも目に映る東北はいつも通りで拍子抜けた。
3/9の私は、カマスで1日中仕事をしていた。
3/10は朝から夕方まで大川小学校で、としさんに同行させてもらった。念願のかばん持ち。と言いつつ特段何かをしたわけではなく、ただただたくさんの学びをもらって帰ってきた。実は私は大川小の語り部はとしさんの話しか聴いたことがなかったのだが、この日はとしさんの他に2人の語り部さんのお話を聴くことができた。大川小の語り部さん6人のうち3人の語り部さんの話を1日に聴けたというのは、なんとも贅沢な話だった。私にとってはとても大切な1日になったので、本当に行って良かった。としさん、ありがとうございました。

3/10、「大川竹あかり」前日の夕暮れ時。

今年の3/11の日中、私は仙台駅のトレジオンでアルバイトをしていた。その日はお客さんが多くて、「ともしびプロジェクト」のキャンドルを接客しながら配布こそしていたものの、14:46は気付いたら過ぎ去っていた。黙祷の放送とか流れないのか!?それとも流れたのに気付かなかったのか?と思いながら、忙しかったといえども東北にいながら14:46に黙祷ができなかったことを恥じた。
学生さんくらいの若い女性のお客さん2人にキャンドルをお渡しした時、「そうか今日か!」と言われて衝撃を受けた。

2011年11月11日から「毎年11日、キャンドルに明かりを灯し SNSで想いを共有しよう」と始まった「ともしびプロジェクト」さんのキャンドル。配ってくれる場所に毎年無料で配布している。

そんな中、3.11の夜のきっかけ食堂。
この日は仙台の「綴café(つづりカフェ)」さんをお借りし、「きっかけ食堂@仙台の今までとこれから」をテーマに食堂を開いた。あえてダイレクトに「震災」をテーマに掲げなかったのは、そんなことをしなくても自然と震災の話に行き着くと思ったからだ。

◯当日のメニュー

〈Food〉

・竹鶏のくんたま(宮城県白石)

・クリームチーズの味噌漬け&クラッカー(福島県南相馬)

・「伊東豆腐店」の冷奴 〜「香の蔵」のお漬物を添えて〜(宮城県仙台/福島県南相馬)

・MYSH畑春野菜のおひたし(福島県南相馬)

・丸森のたけのこカレー with Lifetime nature&farmingのお米(宮城県丸森/宮城県石巻)

・加賀麩のお吸い物

・山元町「プチットジョア」のケーキ(宮城県山元)

〈Food〉

・浜千鳥 純米吟醸 吟ぎんが(岩手県釜石)

・浜千鳥の梅酒(岩手県釜石)

・墨廼江 特別純米酒(宮城県石巻)

・日高見 芳醇辛口純米吟醸(宮城県石巻)

・浦霞の甘酒(宮城県塩竈)

・桃の恵み(福島県)

当日の集合写真。20名近くの方にご参加いただきました。ちなみにお試し移住で出会った大学生「ごうちゃん」が、なんと帰りの新幹線の前に急遽参加してくれたんです…!

きっかけ食堂は「誰もが身近な食、東北の美味しい食であれば、無理なく震災を思い出せるのではないか」と京都の学生3人が考えてはじまった団体だけれども、本当にその通りだと改めて思った。
そして、仲間がいることの心強さも感じた。

「3.11を1人でどう過ごしたら良いかわからない」なら、1人で過ごさなければいい。
「何かしたいけれど、私がやるなんておこがましい」と思うなら、私1人でやらなければいい。
そんなことを感じた、3.11でした。

投稿者プロフィール

佐々木彩乃
佐々木彩乃
1997年6月10日生まれ、26歳。東京都町田市出身。
大学卒業後、教育系の仕事を経て、2023年9月に宮城県に半移住。
次の行き場を探している。
おいしいものと温泉が大好き。
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