インターンを始めて間もない頃、僕は地獄を見た。トリガイの稚貝のカウントである。水槽の底や壁に、びっしりいる稚貝を1匹1匹目視で数えていくのだ。カウンターとライトを持って、中腰で。多い水槽には3000匹以上いることもあった。それだけでは終わらない。少し成長して、海に吊るすようになった後もカウント作業は続く。かごの中で、海藻や砂の中に隠れた稚貝をカウントする。少し大きくなっているので、発見はしやすいものの、邪魔者も増えている。どうにかこの作業をなくしたい。少なくとも負担を減らしたい。そこで思いついたのがAIの活用である。写真を撮るだけで稚貝の数が分かったらどれほど便利で、楽になるだろうか。こうして計数アプリの開発が始まった。
もちろんアプリ開発などやったことはない。ぷろぐらみんぐ??といった具合である。しかし、最近のAIというのはとても優秀で、こういうアプリを作りたい!といえば勝手にコードを書いてくれる。ではコードさえ手に入れば計数アプリはできるのか?否。トリガイの稚貝を認識させるために、「学習」が必要らしい。実際に計数で使うであろう写真の中から、トリガイの稚貝だけを選んでラベリングをしていく。
これがまた地獄。地獄を終わらせるために、また別の地獄に入ってしまったようだ。この2週間、僕がラベリングした数はだいたい450画像・15,000ラベルにも及ぶ。我ながらだいぶ頑張った。もちろんラベリングで終わりではない。それをAIに学習させて、どれくらい検出能力が上がっているか確かめて、最適な学習方法・検出方法をその都度模索して。このサイクルを何回も何回も繰り返す。時には1000くらいラベルを増やしても、検出能力が良くなるどころか悪化して、心が折れそうになることもあった。でも何としても帰るまでに成果を残していくんだというプライドでここまでやり通せた。
インターン最終日、作ったアプリたちの引き継ぎに手間取り、21時くらいまで作業が続いたが、達成感が半端ではない。もう半袖では寒さを感じる夜だったが、るんるんで散歩しながら帰宅した。このアプリたちがトリガイ養殖に革命をもたらせることを願って。
投稿者プロフィール

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大久保静慈(せいじ)。大学生。
幼い頃から生き物が好きで、現在は生物について学ぼうとしている最中。生物の仕組みを理解するだけでなく、それを社会に活かす研究に興味がある。
将来は研究に関わる仕事を目指しており、今回のお試し移住では、トリガイの種苗生産を通して、生物に関する知識や技術が地域産業の中でどのように活かされているのかを、実際に現場で学びたいと思い参加した。




