わからなくても

わからなくても
スポットライトの準備を始める

 

ある人に

「女川を知るためにはもっと長くいる必要があると思う。本当の女川っていうか、そういうのは簡単に表に出てこない」

と言われ、私は悔しかった。

一人とぼとぼ帰りながら、もう全てが嫌になりそうだったが、

しばらくするとなぜか”絶対撮ってやる”という反抗心のようなものが湧いてきた。

そして、ふと港近くのスケートパークが頭に浮かんだ。

 

これまでは人を頼って取材「させてもらっていた」けど

次に行くには、自分だけで交渉して取材「する」必要があるんじゃないか。

私の足は自然とスケートパークの方へ向いていた。

 

「すみません。女川のドキュメンタリーを撮っているんですけど皆さんを撮っても良いですか」

返事は即答で「いいですよ」だった。本当に即答、なんなら少し食い気味。

落ち着いた静かな声だった。

 

スポットライトの準備を始める

 

何すれば良いですか?と聞かれたので、自由に、普段通りの感じでと伝えたのだが、

撮れ高を気にして色々なトリックを見せてくれた。

 

助走をつけて勢いよく

 

少しでも高く

 

大技を決めようと何回もチャレンジする。

私もその瞬間を逃すまいとカメラ越しに彼らを追い続けた。

 

何度でも

 

半袖の白Tを夜の冷たい潮風が揺らす。

聞けばみんな年下で、中には私と8つも歳が離れた子もいた。

 

「明日は何するの?」

「仕事っすね」

「学校です!」

 

カチッとした取材で聞く話も面白いが、”好きで撮る”という感覚も忘れたくない。

日常の小さな一コマをおすそ分けしてもらい、私は小走りで帰路についた。

彼らが最後に言っていた言葉を思い出す。

 

 

「以上、女川でした〜」

 

 

 

Close Menu