【アウフヘーベン(Aufheben: 止揚)】
ヘーゲル哲学の用語。揚棄ともいう。弁証法的観点から,事物の発展は矛盾対立によって行われるが,その場合一つの要素はほかを否定しはするがまったく捨去られるのではなく,保存されてより高い次元に引上げられ,一新されて全体のなかに組込まれる。(ブリタニカ国際大百科辞典より)
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女川のまちづくりを見ていると、震災をきっかけに古き弊害を乗り越えて、新しく生まれ変わったような印象を受けます。「女川は流されたのではない。新しい女川に生まれ変わるんだ。」このスローガンが震災後の女川の8年間の歴史を象徴しているように思えるのです。
ただ、一定期間女川で過ごしてみると、左を向いていたものが、ある事象をきっかけに右へと方向を転換した訳では必ずしもなく、古きものが新しい考えと出会うことで発展的に進められてきたまちづくりなのだなと思うこともあります。まさにアウフヘーベンそのものですね。
唐突ですが、「ムラ社会」ってどういうイメージですか?旧慣の温存、新しい考えを取り入れるための弊害、、
どちらかというと私もそのようなイメージを持っていました。しかし、今回の滞在で、この強い「ムラ社会」の構造こそが女川の復興まちづくりを可能にした一つの要素であることを知りました。色々な人や考えに対して開かれている一方、住民アンケートの記述やヒアリング、街の人の話を聞いてみると、良くも悪くもムラ社会の要素は強く残っていると実感することがあります。
より正確に言えば「開かれたムラ社会」とでもいえるのでしょう。
「結束の土台となる古いムラ社会の慣習があったからこそ、新しいものと出会って発展的に結合していった」そんなアウフヘーベンが女川式構造改革の深層で起きていたことなのではないかというのが次なる仮説です。
さて、よりスコープを広げて世界を見ていると、対立が対立のまま固定化しているような気がしてなりません。対立は必ずしも悪いことではありませんが、どのように折り合いをつけて、より高次な解へと辿り着くこと(=アウフヘーベン)ができるかを考えていかないと社会は廃れていきます。そしてまた、対抗概念がない社会も同様です。特に、ムラ社会の場合は、かつての女川や多くの自治体がそうであったように、対抗概念の芽が生まれなかったり、対立が固定化されたりしやすい傾向にあります。だからこそ、まちづくりには絶えざるアウフヘーベンが大切なのです。
女川町長選挙は10月27日に「投開票予定」です。
女川で出会ってくれた方々へ。今回の滞在も本当にお世話になりました。また必ず戻ってきます!
投稿者プロフィール
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はじめまして!大野志温(おおのしおん)です。
東京都出身24歳。東京大学公共政策大学院修了後、都内で働いております。
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