「サンプル1」の奇跡と軌跡

「サンプル1」の奇跡と軌跡

女川では雪が降りました。

鮮冷さんでの仕事を終え、帰り道に吹雪の中を歩いていると、ふいに一台の車が止まります。

「どこまで行くの?乗ってく?」

ちょうど娘さんのお迎えにいく途中だったそうで、車でハマテラスまで3分弱、時間にしたら短いものの心温まる乗車時間でした。本当に助かりました。

 

ただ、理論的には、これをもって「女川の人って親切だよね。雪の中大変そうに歩いている人を見かけて自分の車に乗せてくれるんだもの。」と言い切ることはできません。サンプル数がたったの1つだからです。しかし、このたった1つのサンプルこそが、ある人にとってのその町に対するイメージを左右します。私にとって今日の1つのサンプルはかけがえのないものでした。

 

統計の概念が出たのでちょっと脱線しますね。

その車で送ってもらった後、ちょうどOCHACCOの和華さんと目があって、中に入って休憩することにしました。そこで頂いた温かいフィググラッセは、疲れていた心をも温めてくれるような程に美味しかったです。しかし、残念ながらこれも客観的にいうとOCHACCOさんの魅力を伝える上で有意なサンプルではありません。なぜなら私の感想には、作る過程や込められた思いなどを知っていたりするなど、OCHACCOさんで働いているというバイアスがかかっているからです。ですが、何はともあれ、この1杯も私にとって、かけがえのない1杯になったことには違いありません。

 

少し本題に戻します。

晩御飯は2日連続で「IZAKAYAようこ」さんで頂きました。昨日の帰り際にリクエストしたサンマの味噌焼き定食が美味しかったことは言うまでもないですが、それよりも嬉しかったのが、お店に入ったときに「おかえり」と自然に声をかけてもらったことです。雪で冷える中を歩いた後なのでなおさら心が温まります。ですが、「女川の人はよそ者にも温かいよ。こんなに素敵な居酒屋があるのだもの」と私が町外の人に伝えたところで、こちらもやはりサンプル数が1では有意にはなりません。

 

「そんなオンリーワンが1つでもあればそれでいいじゃん。サンプルだの有意じゃないだの何言んだこいつ!」と思ったそこのあなた!

 

まさにその通りです。

 

この「サンプル1」にこそ価値があるのです。さらに見ていきましょう。

 

今日傍聴させて頂いたまちづくり推進会議では、これまでの女川、これからの女川についてパネリストや住民の意見交換が行われました。途中から進行を担当した東北大准教授のタイムマネジメントは酷かった(ハード設計に関するプレゼンテーションそのものは非常に面白かったことは付言しておきます)ものの、それまでの私のイメージにはなかったような意見交換の場になっていて「これが女川の推進力か。まだまだ伸びるぞ」と思わせてくれるような会でした。実際に私はそれまでの女川町のまちづくりに関する意見交換会や会議を拝見してこなかったため、女川における意見交換の場のあり方を判断するには不十分ですが、そこに魅せられたことも事実です。たった1つのサンプルが心に刻みこまれる~まさにかけがえのない「サンプル1」の事例だといえます。

 

このような「サンプル1」は有意ではないけれども、何か不思議な魅力を持っていますよね。統計では見落とされがちな世界です。数あるサンプルの中でそれを引き当てる「サンプル1の奇跡」とでも言ったらよいのでしょうか。

どうですか、このブログを読んで頂いている町外の方は、女川に足を運んでみたくなったでしょう?

 

女川にはそうした「サンプル1」「奇跡」が沢山溢れています。その積み重ねが人を呼び込み、更なる町のイメージを形成していくのです(当然逆回転も考えられます。よい奇跡を生み続けていくためにはやはり以前書かせて頂いた「第一線の女川人」の存在は欠かせません)。まだまだ道半ばですが、好循環を生むための下地も揃ってきていると思います。まさに女川は、日本におけるまちづくり先進事例の「サンプル1」としての「軌跡」を描いている途上に今はいるのかもしれませんね。

投稿者プロフィール

Shion Ohno
Shion Ohno
はじめまして!大野志温(おおのしおん)です。
東京都出身24歳。東京大学公共政策大学院修了後、都内で働いております。
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