「工場法」に思いを馳せて~身近なマルクス経済学と女川の特殊性~

「工場法」に思いを馳せて~身近なマルクス経済学と女川の特殊性~

1802年、英国では世界ではじめての「工場法」が制定され、33年に本格的な立法化がなされました。世界史を学習した方であれば、同法の発展に尽力したオーウェンやシャフツベリー伯といえば馴染み深いかもしれません。これは、当時の産業革命による資本家の過重搾取を規制しながら工場労働者の権利を守るための法律であり、のちの「全国のプロレタリアート、団結せよ!」でお馴染みのマルクス主義(共産主義ではなく、純粋な『資本論』の世界において)にもつながっていきます。

 

それほどまでに当時の工場労働者の労働環境は厳しいものでした。

 

・・本題に入りましょう・・

今日からは「鮮冷」さんの水産加工工場で働き始めたのですが、まず驚いたのが工場内の綺麗さと衛生面の徹底です。食品加工だから当たり前じゃないかと思う方もいるかもしれませんが、かつてまで水産加工といえば「臭い」「きつい」「汚い」といったイメージが真っ先に浮かび上がります。しかし、女川では、震災によって古い設備が全て流されてしまった分、最新の設備を取り入れた加工方式で再生を果たし、世界に誇る衛生水準となっています。これもまさに水産業(水産加工業)からみた震災後の「女川式構造改革」の一つの側面です。

 

その一方で、仕事は簡単ではありません。単純な流れ作業をひたすらミスなく数時間繰り返すことはかなりの忍耐力と集中力を要します。「無」になる時間も多くなっていき、タイトルのように「1800年代の英国の労働者はどのような気持ちでこのような工場労働をこなしていたのだろう」と想像を膨らませてみたり、「これはプロレタリアートも団結して資本家と闘いたくなるよな」と考えてみたり。生来そういう思想は全くないのですが、工場労働者の身になってみると経営者に対する見方も多少変わってきます。(*鮮冷さんの場合、休憩時間を頻繁にとって効率性を図るなど、こちらも従来の水産加工業とは違う従業員への環境整備を行ってくれています)。工場労働者の環境整備は、効率性や品質管理のみならず、人材確保の面においても重要であり、日本全国の農林水産業が課題としているところでもあります。こちらにおいても、女川の事例は先進事例として興味深いものの、震災という特殊要因が強く作用している分、他の自治体が応用することにおいて一筋縄ではいかない部分もあります。

 

さらに言うと、「俺らが買い支えないと漁業は衰退していってしまう」との危機感で大規模な投資を行いながらスケトウダラを買い支えている地元老舗企業の社長(女川の読者は、誰だかお分かりだと思います笑 ガル屋でお会いするたびにその人柄に魅力を感じるあの人です。)の存在など、女川ならではの震災後の水産業を支える構造が出来上がっているのです。まだまだ情報足らずなので、今後、水産業というアプローチからも女川のまちづくりに迫っていきたいと思います。

 

とにかく疲れました。OCHACCOさんのカモミールティーと、温泉&ビール、ようこさんの定食が明日へのエネルギー源です。そのような至福の時間を過ごしていると、ふと、マルクス経済学おいて、賃金とは「労働力の再生産に必要な生活資料の価値」と定義されていることを実感しました。とりとめのない内容ですみません。

 

投稿者プロフィール

Shion Ohno
Shion Ohno
はじめまして!大野志温(おおのしおん)です。
東京都出身24歳。東京大学公共政策大学院修了後、都内で働いております。
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